「転職、失敗したかも」が頭から離れないとき|考えを"事実と推測"に分ける

転職してから、「この決断は正しかったのか」という考えが、ふとした瞬間に浮かんでくる。そんな状態が続いていませんか。

この記事では、頭にある一文を「事実」「推測」「まだ分からないこと」に分けて眺める方法を紹介します。読み終える頃には、今すぐ結論を出さなくていい、と思えているはずです。

転職後に考えが極端になりやすい理由

転職してしばらくは、些細なことでも「これでよかったのか」と考えが揺れやすい時期です。厚生労働省がまとめている資料でも、転職や配置転換のような大きな変化は、心身の負担につながりやすいストレスの一つとして挙げられています。新しい環境に慣れていく途中では、ものごとを両極端に受け取ったり、まだ起きていない先のことを悪い方向に考えてしまったり、うまくいかないことの原因を自分のせいだと結びつけやすくなったりする、という傾向が知られています。

これは、考え方が弱いからではなく、変化の大きい時期に起こりやすい反応のひとつとされています。今、似たような感覚があったとしても、それ自体がおかしいわけではありません。

なお、自分を責めてしまう感覚は、転職の場面に限った話ではありません。

🔗 自分を責めてしまう感覚について書いた記事はこちら

<今日ためす1つ>その一文を3つに分ける

やってみるときは、むずかしく考えなくて大丈夫です。今、頭にある一文だけを使って、3つに分けてみましょう。

今日ためす1つ:その一文を3つに分ける

  1. 頭にある文を1行で書く(例「この転職は失敗だった」)
  2. ①事実 ②推測 ③まだ分からないこと に線を引いて分ける
  3. 出やすいクセに当てはまるか見る(白黒思考/先読み/自己関連づけ)

全部きれいに分けられなくても、それで十分です。

「辞める・続ける」を今すぐ決めなくてよい

「辞める」か「続ける」か、答えを急いで出そうとしていませんか。今どちらか決められなくても、焦って結論を出すべき場面ではありません。事実と推測が入り混じったまま判断すると、あとで「あのときは冷静じゃなかった」と感じることもあります。

情報が出そろっていない段階では、「まだ分からない」のままにしておいて構いません。1人で抱え込まず、誰かに話しながら整理していくというやり方もあります。

当院のカウンセリングは、臨床心理士・公認心理師が話を聞きながら気持ちの整理やこれからの向き合い方を一緒に考えるものです。無理に何かを決めなければならない場ではありません。

自分の考えだけでなく環境のほうを調整する選択肢もある

考えを整理するだけでは、状況そのものが変わらないこともあります。今しんどく感じている理由は、受け止め方だけの問題とは限りません。

つらさの中身を分けてみると、気持ちの面だけでなく、人間関係や業務量、評価のされ方といった職場のあり方に理由がある場合もあります。眠れない、食欲が落ちるといった体調の変化や、朝起きられない、休日も回復しないといった生活面の変化として表れることもあります。

考え方を見直すことと同じくらい、環境の側を調整する視点も持っておいてよいと思います。

🔗 転職後のつらさを4つの視点で整理した記事はこちら

つらさが続くときは「適応障害」という枠で考えることもあります

つらさが1回きりでなく、しばらく続いているという場合には、「適応障害」という枠で考えることもあります。

適応障害は、環境の大きな変化による負担が、その人の対応できる範囲を超えたときに、気持ちや行動にあらわれる不調を指す言葉です。うつ病のように別の診断名がつく段階には至っていない状態とされ、転職のような変化がきっかけになること自体、めずらしくありません。

ただし、いくつ当てはまるかを自分で数えて診断するものではありません。当てはまるかどうかは、話を聞いた専門家が一緒に考えていくことです。「そういう見方もある」と知っておくだけで十分です。

このシリーズでは、適応障害という視点から考えを整理する場面を、別の記事でも扱っています。

🔗 別の場面での使い方はこちら

よくある質問

Q. 転職して数週間で「失敗した」と感じるのは普通ですか

珍しいことではありません。厚生労働省の資料でも、転職は心身の負担につながりやすいストレスの一つとされ、そうした時期は自分や周り、この先を否定的に考えやすくなる、と説明されています。「失敗した」という言葉が浮かんでも、それが事実か、まだ確かめていない推測かを、一度分けて眺めてみてください。

Q. 白黒思考などの考え方のクセは自分で直せますか

少しずつ気づいて、扱いやすくしていくことはできるとされています。考え方のクセに働きかける方法として、厚生労働省「こころの耳」でも認知行動療法が紹介されています。ここでご紹介しているのは、その考え方をヒントにしたセルフケアで、治療としての認知行動療法そのものではありません。一人で難しいときは、無理に続けなくても大丈夫です。

Q. 今の会社をすぐ辞めるべきか、この記事だけで判断できますか

できません。この記事は、頭に浮かんだ考えを事実と推測に分けて眺める方法の一つで、辞める・続けるの判断を導くものではありません。厚生労働省「こころの耳」でも、適応障害からの回復には環境の調整が重要とされていますが、調整の仕方は状況によって異なります。進退の判断は、記事だけで決めず、専門家や信頼できる人に話しながら考えることをおすすめします。

Q. つらさが続く場合、何科に相談すればいいですか

心療内科・精神科のどちらでも、まずは相談できます。e-ヘルスネットによると、心療内科は心理的な影響で起こる体の不調を中心に、心身両面から診ていく診療科とされ、精神科への抵抗感から選ぶ方もいるといいます。迷う場合は、両方を掲げるクリニックであれば、まとめて相談して構いません。

まとめ

転職後に考えが極端になりやすいのは、めずらしいことではありません。頭に浮かんだ一文を事実・推測・まだ分からないことに分けると、今すぐ動かせる部分と、まだ動かせない部分が見えてきます。

「辞める」か「続ける」かも、今すぐ決める必要はありません。考え方を整理する視点と、環境を見直す視点、どちらも持っておいて大丈夫です。

対面が難しいときは、オンライン診療という方法もあります。

参考文献

厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料」(PDF) https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

厚生労働省「こころの耳」用語解説「認知行動療法」 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1666/

厚生労働省「こころの耳」用語解説「適応障害」 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1653/

e-ヘルスネット「心療内科」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-087.html

iこころクリニック日本橋編集部

当院の診療内容や精神科・心療内科に関する情報をもとに、患者さまのお役に立つ情報を編集・発信しています。

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